核-細胞質間の物質輸送機構

分子情報解析学分野・准教授・吉村成弘

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核膜孔は真核細胞の核膜に存在し、細胞質と核質との間の物質輸送を仲介する重要なタンパク質複合体です。核膜孔は分子量約100 MDaほどの巨大な複合体(核膜孔複合体)で、約30種類のサブユニットから構成されており、その外径は100 nm以上になります。核膜孔を介した物質輸送は、細胞内のタンパク質や核酸の局在を制御する上で重要な役割を果たしており、複雑な制御機構が存在しています。これまでの研究の結果、核膜孔を通過しやすい物質としにくい物質、また通過を助けるタンパク質等が同定され、それらの機能が次々に明らかになっています。しかし一方で、核膜孔の内部の構造や、そこをタンパク質が通過する際の詳細な分子機構は理解されていません。当研究グループでは、タンパク質が核膜孔を通過する際の構造的な分子基盤を明らかにするとともに、それをドラッグデリバリーシステム等の分野に応用する研究を行っています

 

on-going projects

タンパク質が核膜孔を通過する原理を理解するために、importin betaと呼ばれるタンパク質を対象に、その構造変化が穴の通過にどのような重要な働きをしているのか。それを実験的に、また計算機を使って解明しようとしています。

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importin betaに見られる両親媒性モチーフの繰り返し構造は、他の数多くのタンパク質で見られます。それらは、核輸送のみならず、細胞内の様々な場所で機能しています。いったい、この両親媒性構造の一般原理とは何か。それを明らかにする取り組みです。

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両親媒性モチーフの繰り返し構造と核膜孔通過能との間には密接な関係があるようです。ここでは、タンパク質の高次構造情報に基づいた分子デザインと、計算科学とを組み合わせ、細胞質から核内へ物質を運搬するための全く新しい分子を創製し、ドラッグデリバリー分野等に貢献することを目指します。

 

*このプロジェクトの一部は、日本学術振興会「最先端・次世代研究開発支援プログラム」により支援されています。